ダクト清掃とは

「ダクト清掃」とは、建物内の通気経路である「ダクト」の内部を清掃することです。ダクトを長年使用していると、チリやホコリ、油などの汚れがダクト内に付着していきます。ダクト内の汚れを放置するとダクト本来の機能を低下させ、雑菌の繁殖といった衛生的問題も発生します。定期的なダクト清掃をおこなうことで、これらのトラブルを未然に防ぐことが可能です。

また、ダクト内には防火ダンパーや逆風防止弁が設置されています。ダクト清掃が長期間おこなわれていなければ、ダンパーや弁に汚れが詰まって故障しているケースもあります。外側からは見ることができないダクト内部に、何らかの問題が起きていないか点検するのもダクト清掃の重要な役割です。

工場内にはさまざまな機器・設備があります。適切なメンテナンスをおこなって性能を維持し、効率低下が起こらないようにしてランニングコストを抑え、寿命を延ばすことが管理者の責任です。ダクト清掃も機器・設備メンテナンスの一環といえるでしょう。効率的で効果的な清掃・点検業務をおこなうのなら、ダクト清掃業務のプロに任せるのが一番です。

ダクト清掃とは

ダクトの種類

ダクトの種類は「厨房ダクト」「空調ダクト」「換気ダクト」の3つです。どれも建物内に設置された空気の通り道という点は共通していますが、目的や役割は異なります。以下、それぞれのダクトの特徴を解説します。

厨房ダクト

厨房ダクトは調理で出た熱や煙を排出します。気化した油がホコリと混じって、粘性を持った汚れもたまりやすいダクトです。フィルターをつけていたとしても油分を完全に除去するのは難しいため、2〜3カ月に1度は清掃・点検をおこなうことが望ましいです。ダクトにたまった油が漏れてくれば、引火して火災を起こす可能性もあります。

実際に飲食店の厨房ダクトや焼肉店の排気ダクト、食品工場のダクトから出火し、火災が発生するケースも多いです。東京消防庁がおこなった火災を想定したダクト内部の温度上昇の実験では、ダクトの大部分が1000℃以上にまで上昇することがわかっています。ダクト内部に汚れがあるとすぐに引火し、建物内の延焼も早まってしまう可能性が高いです。

空調ダクト

空調ダクトは、主に建物内の温度を調整する目的で使われます。建物内の空気を排出するダクトや外気を取り入れるダクト、空調機と接続されているダクトがあります。通常、空調ダクトにもフィルターが設置されていますが、チリやホコリの侵入をゼロにできるわけではありません。

空調ダクト内に異物や湿気がたまるとカビの温床となり悪臭の発生源にもなります。また、熱交換効率が悪くなったりダクト内の空気抵抗が大きくなったりして空調効率が低下します。外気を取り入れるダクトや空調機と接続しているダクトの場合、ダクト内の状態が悪いと室内の空気に悪影響を与えるため、定期的なダクト清掃をおこなうことが必要です。

換気ダクト

換気ダクトは室内の空気を換気扇から取り入れて排気口へと送る管で、温度調節を必要としないトイレや倉庫などに設置されています。換気ダクトのおかげで室内の空気の入れ換えができ、カビや結露を防ぐことができます。しかし、外の空気も取り入れるので砂やホコリがダクト内にたまりやすいです。

清掃が長期間おこなわれていなければ排気能力が低下し、ダクト内にトラブルが起こる可能性があります。ダンパーに不具合が出たりカビや悪臭の発生源になったりするなどです。衛生的にも問題があるため、換気扇とダクト両方に定期清掃をおこなう必要があります。

空調・換気の役割は?

現代の建物のほとんどに空調・換気の設備があり、その多くにダクトが備えられています。2003年には、建築基準法施行令において住宅の居室においても機械換気設備の設置が義務づけられました。なぜ建物に空調・換気が必要なのでしょうか。ここでは、空調・換気の役割について説明します。

換気

換気とは「空気の入れ換え」を意味し、屋内の空気と屋外の空気を入れ換えることです。調理や暖房、あるいは人の呼吸によって、二酸化炭素や水分が室内に放出されます。気密性が高い室内で換気が長時間おこなわれないと、空気が滞留して淀んだ状態になります。体調が悪くなったり、カビや感染症の発生につながったりするため、健康的に活動するためには換気が必要です。

空気清浄

室内で活動をおこなうとチリやホコリが舞い上がります。また、室内の空気が淀んでいると感じるときには細菌やカビも浮遊しているかもしれません。換気だけでは花粉や微粒子を排除するのも難しいでしょう。空気清浄は、そういった空気中の不快物質を取り除くのに有効な方法です。シックハウス症候群や感染症への対策という観点からも、近年では空気清浄の重要性が高まってきているといえます。

消臭や脱臭効果

空調・換気には消臭と脱臭の効果があります。食品工場や厨房では、加工や調理の過程でさまざまな臭いが発生します。一般家庭でも料理や洗濯をしたとき、あるいは化粧品やスプレー類を使用したときには、部屋に充満する臭いを除去したいこともあるでしょう。空調機や換気扇を使って臭いのある空気を吸い込み、ダクトを通して屋外へ放出します。窓やドアを開けて空気の入れ換えをおこなうより効率的で、外部の騒音や虫の侵入などを気にする必要もありません。

冷房や暖房

空調とは「空気調和」の略で、空気の温度や湿度、流れを調整し、空気を清浄することです。その中でも温度の調整、すなわち冷房や暖房のウェイトは大きいといえます。例えばエアコンは、室内機と室外機をダクトで接続し、空気の交換と同時に熱交換をする装置です。工場などでは建物空間内の空気の流れを計算して、ルーフファンや換気扇、冷暖房設備を組み合わせた空調システムを備えているケースもあります。室内の人が活動しやすい温度に保つことはもちろん、機器や設備、資材などの故障・劣化を防ぐためにも冷房と暖房は重要です。

ダクト清掃の重要性

ダクト内部の汚れを放置すると、空気を汚染したり火災のリスクを高めたりするおそれがあります。したがってダクト清掃は、主に衛生面と防災面から見て非常に重要な作業であるということができます。

衛生面の重要性

空調・換気において、ダクトは屋内と屋外をつなぐ空気の通り道となります。屋内の汚れた空気を排出し、屋外から新鮮な空気を取り入れるには、ダクトが想定どおりの機能を発揮することが必要です。もし内部がチリやホコリ、油などで汚れていたり、細菌やカビが発生していたりすれば、ダクトを通る空気が汚染されてしまいます。清掃をおこたると害虫の巣になるケースもあるため注意が必要です。

ダクトの機能が低下して換気が十分におこなわれなかったり、ダクトから汚染された空気が建物内に入ってきたりした場合、さまざまな悪影響が起こると考えられます。人体への悪影響の1つはシックハウス症候群です。清浄でない空気によって頭痛やめまい、倦怠感といった症状が引き起こされます。複数の人が活動する屋内では、感染症対策のためにもダクト機能の低下を避けなければなりません。そのためにも定期的なダクト清掃が重要です。

防災面の重要性

食品工場や飲食店の厨房にあるダクトは、調理時の煙と臭いを排出するのを目的として設置されています。油を含んだ煙が入りこむため非常に汚れやすく、長く放置するほど清掃が大変になってしまいます。さらに大きな問題はダクトが火元に近い場所にあることです。炎が高く上がるなどしてダクト内へ高熱の空気が入った場合、内部の異物に引火して火災が発生する可能性があります。構造的にダクトは熱がこもりやすく、内部で数百度を超える高温になる場合があるためです。

また、汚れがこびりついたダクトは火災時の延焼ルートとなりえます。ダクト自体は不燃素材で作られていて簡単には燃えない構造になっていますが、内部の汚れを炎が伝っていけば火災の拡大は避けられません。ダスト内を清掃してクリーンに保っておくことで、万が一のときにも汚れに引火する可能性をなくすことができます。

ダクト清掃の方法

ダクト清掃は「ダクトビート工法」または「ダクトストリーム工法」でおこなわれます。以下、2つの清掃方法を解説します。

ダクトビート工法

ダクトビート工法は、工場などの大口径の換気ダクトに用いられる清掃方法です。専用の機器を使うことによってチリやホコリを強力に吸引します。ダクトビート工法では大きいホースを使用するため、清掃作業時に工場の稼働を止める必要があります。たまった汚れを確実に除去できる方法でありながら、あまり清掃コストはかかりません。

ダクトストリーム工法

ダクトストリーム工法は、戸建て・マンションに設置される小口径ダクト向けの清掃方法です。ダクトビート工法よりもダクトビート工法で使用する機器ほど大きくはないものの、比較的大型の掃除機のような機器を使用します。汚れの吸引が不十分な場合は、ブラシをダクト内に挿入して内部にこびりついた汚れをかき落とします。チリとホコリの汚れだけなら吸引したりかき落としたりすれば綺麗に落とせます。

厨房ダクトのしつこい油汚れだと、ダストストリーム工法だけで対処するのは難しいケースが多いです。吸引・かき落としでチリやホコリなどを除去した後、残った油汚れに対しては薬剤や高圧洗浄による清掃処理をおこないます。

ダクト清掃の主な流れ

ダクト内には見えにくい箇所や掃除しにくい箇所があるため、経験や技術、あるいは専用機材がなければ、清掃を十分におこなうのは困難でしょう。工場の大型ダクトや油汚れがひどい厨房ダクトの場合は、専門の清掃業者に依頼するのをおすすめします。

空調ダクトや換気ダクトの清掃は比較的やりやすいため、業者に頼らずにダクト清掃や点検が可能です。その場合は、以下の流れで清掃をおこないます。

1)換気扇の電源を切る

2)フィルターを取り外す

3)フィルターの清掃と点検をおこなう

4)ヘラ状の清掃器具でチリやホコリを除去する

5)落ちにくい汚れは中性洗剤を用いてブラシやタワシなどでこする

6)雑巾などで汚れと水分を拭き取る

7)フィルターを戻して清掃完了

ダクト清掃の注意点

ダクトの清掃前には必ず換気扇の電源を切ってください。コンセントから電源コードを抜いて、万が一にも動かないようにしておきましょう。清掃中に換気扇が回ってしまうとファンに手を巻き込まれてケガをする可能性があります。

また、ダクト付近にカバーをかけておくことも大切です。洗剤や水がダクト周りの電子部分に侵入すると、故障やショートの原因になります。また、チリやホコリが周囲に飛び散ると片付けの手間が増えます。

ダクトは室内の高い場所にあり、清掃するときには足場が必要です。落下などの危険性があるため、不安定な足場で作業することは避けましょう。

定期点検の目安

ダクトの定期点検の目安は「1年に1回」です。ダクトの使用状況や設置環境によって汚れのたまり具合が異なるため、より短いスパンで点検をおこなったほうがよいケースもあります。

それほど汚れがたまらない空調・換気ダクトの場合は、3~5年に1回でも十分かもしれません。しかし、汚れが付着しやすい厨房ダクトは、1年以内に1回は必ず清掃と点検をおこないましょう。厨房ダクトは汚れが溜まりやすく、火の近くに設置されていることもあって、長期間放置したときのリスクが高いためです。

定期的なダクト清掃や点検は、衛生や防災の観点から必ずおこなうべき重要な業務といえます。しかし、日々の忙しい業務の合間をぬって、ダクト清掃まで手が回らない事業者も多いかもしれません。もしダクト清掃に不安があるなら、専門知識と高度な技術を持ち、専用の清掃機材が用意できる清掃業者に依頼することをおすすめします。